2017年03月11日

名大入試問題 2017 (2)

2017 年名大入試問題の二問目です。個人的には一番悩まされた問題です。

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下図のような立方体を考える。この立方体の 8 つの頂点の上を点 P が次の規則で移動する。時刻 0 では点 P は頂点 A にいる。時刻が 1 増えるごとに点 P は、今いる頂点と辺で結ばれている頂点に等確率で移動する。例えば時刻 n で点 P が頂点 H にいるとすると、時刻 n + 1 では、それぞれ 1 / 3 の確率で頂点 D, E, G のいずれかにいる。自然数 n ≥ 1 に対して、(i) 点 P が時刻 n までの間一度も頂点 A に戻らず、かつ時刻 n で頂点 B, D, E のいずれかにいる確率を pn、(ii) 点 P が時刻 n までの間一度も頂点 A に戻らず、かつ時刻 n で頂点 C, F, H のいずれかにいる確率を qn、(iii) 点 P が時刻 n までの間一度も頂点 A に戻らず、かつ時刻 n で頂点 G にいる確率を rn とする。このとき、次の問に答えよ。
(1) p2, q2, r2 と p3, q3, r3 を求めよ。
(2) n ≥ 2 のとき、pn, qn, rn を求めよ。
(3) 自然数 m ≥ 1 に対して、点 P が時刻 2m で頂点 A に初めて戻る確率 sm を求めよ。
(4) 自然数 m ≥ 2 に対して、点 P が時刻 2m で頂点 A に戻るのがちょうど 2 回目となる確率を tm とする。このとき、tm < sm となる m をすべて求めよ。

立方体ABCD-EFGH

(1) 時刻 1 で点 P は B, D, E のいずれかにいるので p1 = 1 です。時刻 2 では B, D, E から A に戻る確率が 1 / 3、C, F, H へ移動する確率が 2 / 3 なので p2 = 0, q2 = 2 / 3, r2 = 0 となります。時刻 3 では C, F, H から G へ移動する確率が 1 / 3、B, D, E へ戻る確率が 2 / 3 で、q2 = 2 / 3 だったので p3 = 2/3 x 2/3 = 4 / 9、q3 = 0、r3 = 2/3 x 1/3 = 2 / 9 となります。

(2) n = 2m ( m は 1 以上の整数 ) のとき、点 P は C, F, H のいずれかにあるので p2m = r2m = 0 になります。また、n = 2m - 1 のとき、点 P は C, F, H のいずれにもないので q2m-1 = 0 です。
時刻 2m + 1 のとき、C, F, H にいた点 P は 2 / 3 の確率で B, D, E へ、1 / 3 の確率で G へ移動するので p2m+1 = (2/3)q2m、r2m+1 = (1/3)q2m が成り立ちます。また、時刻 2m + 2 のとき、B, D, E にいた点 P は 2 / 3 の確率で C, F, H へ、1 / 3 の確率で A へ移動し、G にいた場合は必ず C, F, H に移動するので q2m+2 = (2/3)p2m+1 + r2m+1 となります。従って、

q2m+2 = (2/3)・(2/3)q2m + (1/3)q2m = (7/9)q2m より q2m = (2/3)(7/9)m-1

であり、

p2m+1 = (4/9)(7/9)m-1、r2m+1 = (2/9)(7/9)m-1

となります。

(3) 時刻 2 のときは、(1) で述べたように 1 / 3 になります。それ以降は、時刻 2m - 1 のときに B, D, E にある確率 p2m-1 = (4/9)(7/9)m-2 に、A に移る確率 1 / 3 を掛ければ求められ、sm = (4/27)(7/9)m-2 になります。

(4) B, D, E にいる場合を X、C, F, H にいる場合を Y で表すことにします。まず、t1 = 0 は明らかです。t2 は A→X→A→X→A と遷移する場合しかないので、 1/3 x 1/3 = 1 / 9 です。s2 = 4 / 27 なので t2 < s2 となります。t3 は以下の二通りの確率の和になります。

A→X→A→X→Y→X→A 1/3 x 2/3 x 2/3 x 1/3 = 4 / 81
A→X→Y→X→A→X→A 2/3 x 2/3 x 1/3 x 1/3 = 4 / 81

よって、t3 = 8 / 81 で、s3 = 28 / 243 より t3 < s3 です。t4 の場合、

(a) A→X→A→X→Y→{ X or G }→Y→X→A
(b) A→X→Y→X→A→X→Y→X→A
(c) A→X→Y→{ X or G }→Y→X→A→X→A

となりますが ( X or G はいずれかに遷移するという意味です )、(a) の場合 A→X→A の部分とそれ以降に分けて考えると、それぞれ初めて A に戻る確率 s1, s3 に等しいので 1/3 x (4/27)(7/9) = 28 / 729 です。同様に (b) は 4/27 x 4/27 = 16 / 729、(c) は (4/27)(7/9) x 1/3 = 28 / 729 で、合わせて 72 / 729 になります。s4 = 196 / 2187 なので t4 > s4 で m = 4 のときは成り立ちません。

m = 4 の結果から、m ≥ 4 の場合の tm の計算式が以下のようになることがわかります。

tm = (1/3)・(4/27)(7/9)m-3 + (4/27)・(4/27)(7/9)m-4 + (4/27)(7/9)・(4/27)(7/9)m-5 + ... + (4/27)(7/9)m-3・(1/3)
= (2/3)(4/27)(7/9)m-3 + (4/27)2( m - 3 )(7/9)m-4
> [ (2/3)(9/7) + (4/27)(9/7)2 ](4/27)(7/9)m-2
= (162/147)(4/27)(7/9)m-2 > sm

従って、条件を満たす m は 2, 3 になります。

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